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交通死―命はあがなえるか (岩波新書)レビュー
交通死―命はあがなえるか (岩波新書)は、さすが岩波書店は違うなといったそんな印象です。
久々に第一印象で買ってしまいました^^;
人を置去りにしない,一歩先の社会へ。
どうして,埋もれたままになっているのだろう,
時々,そう感じさせる名著に触れることがあります。
僕にとって,本書はその1つ。
法分野でいえば,不法行為法の端の方,議論のチャ
ンスは,それほど多くはありません。けれども,一度
立ち入ってしまえば,二木が紹介してくれた通り,透
明で,中立的であるはずの法と,誰もが持っているは
ずの素朴な倫理観とが鋭く反発し合う,深い,深い森
林であることに気が付くはずです。直ちに方向を見失
わせてしまうほど,困難な問題です。
二木は,経済学から,あるいは1人の父親から見た
法制度の歪みを淡々と指摘しているにすぎません。裁
判官,国会議員,法学者,ドライバー,幸運にも本書
に触れた一般読者,いずれのカテゴリーにある人に対
しても,彼は,この課題の解決策を求め,または自ら
提示するという拙速な試みには出ていないのです。本
書の価値は,そうした控えめな姿勢によって,下支え
されているように思います。
もっとも,このことは決して,二木自身が解決の方
向性を知らないことまでは意味していないのだと思い
ます。これほどの分析を積み重ねた訳ですから,その
過程で,彼は相応の糸口を掴んでいたに違いありませ
ん。それでもなお,勇み足で粗雑な議論を進めないよ
う,注意深く言葉を選んだ跡が窺えます。
二木が見付けたはずの,「ひと」を見失わない司法
へ,温かい司法で充たされた一歩先の社会へ,価値あ
る提言。
リアリティ
まずは、娘さんを失うという悲劇に見舞われながら、
かくも有益な書物を著した著者に敬意を表したいです。
一般に法律書は、法律の理論家が、
法律に興味を持つ人、実務で用いる人向けに著しているといえます。
ゆえに論理の筋道はしっかりしているものの、
血が通っていない、また、生の事例である判例を取り上げていても、
どことなくクールな印象はぬぐえません。
その点、法律のアマチュアが、
自ら多大な努力と犠牲を払って取り組んだ事例を題材にした本書は、
法律家の気づかないような制度の不備、冷徹さを言い当てていると思います。
車を運転する方はもちろんですが、
特に、不法行為法、民事訴訟法を学んでいる法学部生は必読かと思います。
くるま社会の危険性を知る
『交通死』を読んでいて感じたのは、筆者がこれほどまでに細かいことまで調べ上げ、よく妥協せずに戦っているということだ。きっとこれが殺人事件であったら、このような感想は持たなかっただろう。交通事故は、誰かが交通規則を破ったために起こる「犯罪」であるにもかかわらず、交通事故で人が死ぬということに対して、私たちは無関心になっているということに気づかされた。いつ被害者になってもおかしくない社会で生活していながら、交通事故に対しての感覚は麻痺しているといえる。裁判が始まるまでの手続きや、加害者を起訴するかどうかを決める過程に被害者が介入しないことは、加害者にとって有利になるという公平性を欠くものになりかねない。また、被害者は公判を傍聴しても法廷で行われたことがわかりにくいということは、裁判は公開されているとはいえ、閉鎖的と言わざるをえない。この刑事裁判が国家と加害者の関係であるので、被害者が介入できないのは当然かもしれないが、自分や自分の家族が巻き込まれた事件であるから捜査結果が報告されないことや、加害者だけがその人間性をオープンにできるということは、被害者の立場から考えればおかしいことと考えて当然である。このように問題点を知ることができる本である。
岩波書店にしては、と値段もお手ごろですので、お勧めです。
交通死―命はあがなえるか (岩波新書)
二木 雄策

定価: ¥ 819
販売価格:
人気ランキング: 46101位
おすすめ度: 
発売日: 1997-08
発売元: 岩波書店
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